スマートシティ徒然
ー 与太話「宵越しの銭は持たねえ」
text:吹田良平
スマートシティの一角に暖簾を掲げる小料理屋があったとして、我々はそこでどんな時を過ごすのか。その店の大将は果たして人間なのか、細おもてで無精髭をはやした精巧な造りのロボットなのか。
ロボットだとして、大将(AI?)は客の冴えない与太話にきちんと苦笑いを返してくれるのか。その日の気温や湿度、客の顔色、体温や声のトーンと過去の注文履歴の一切合切を瞬時に解析し、出してくれる最初の一皿は「ぬた和え」なのか「蛸ぶつ」なのか。食のフィルターバブルは偏食と生活習慣病を加速させないのか。店主との関係性の中で育まれる客の人間生成能力は劣化しないのか。あるいは、顔認証で勘定が済んでしまった暁には、「宵越しの銭は持たない」文化は消えて無くなるのか。
仮に、大将(AI?)との一定の距離を大事にする都会者は、自前の節度と分別でもってその一時を無事やり過ごしたとしよう。さて、いざ店を後にするとき、酔い覚ましがてら歩いて帰ることに心移りした刹那、出待ちしてくれてたパーソナルモビリティに角が立たぬよう、我々は上手く断わることができるのか…。
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