年齢(とし)は語れても都市は語れず
text:吹田良平
「MaaSがいかに都市を変えるか」と言った類のイベントに参加した。登壇者はデベロッパーや鉄道事業者、ラストワンマイル用移動事業者等MaaSプレーヤーで、彼らがMaaSを通して都市を語るという趣向だ。
2時間半のイベントが終わっての私の感想はこうだ。「MaaS事業者は年齢は語れても都市は語れない」。例えば、レンタサイクルは当初20から30歳代の利用者層を想定していたが、蓋を開けてみるとその上の世代の割合が多かったとか、オンデマンドバスはシニアよりも思いの外、若い世代が多く利用してくれた云々。最後にご意見番的立ち位置のパネリストはこう言って、その催しは幕を閉じた。「我々のゴールはデジタル(データ)を駆使して、完璧にコントロールされた社会を作り上げること」。途中にはこんな発言もあった。「従来の都市計画や街づくりの発想に皆、飽き飽きしている。そこで新たに街の開発を考える際、演出家や劇作家に加わってもらう動きも出てきている」。そこで私はいたたまれなくなった。漫画の見過ぎだよ。
登壇者の発言は、いずれも無知な私に新たな知見を与えてくれたし、私だって漫画からインスピレーションを得た経験は少なからずある(私のサードプレイス観の原体験は「750ライダー」)。それでもだ、そして気付いた。スマートシティが未だに退屈なのは、こういう背景のせいかもしれない。
photo: AugustineWong on Unsplash
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